広告規制とは?代表的な法律3つと2023年10月1日から始まったステルスマーケティング規制についても解説!
みなさんは、日々のマーケティング活動の中で「これって法的にどうなの?」と感じた出来事はありませんか?
例えば…
- 「地域No.1」の表記ってしていいの?根拠があればOK?
- 自社で作った制作物が、法的に問題ないのかどうかわからない…
- フリー素材のサイトのものであれば、いくら使っても大丈夫だよね?
- たまたま作ったデザインが他社のものと似ているようだけど、これって違法?
広告に関する法律はもちろんありますが、現代社会に対応すべく、その内容も日々変化を続けています。今一度、広告にまつわる法律や規制をおさらいし、正しく広告を扱うための知識を身につけましょう。
■広告を規制する法律
広告を規制する法律として、まずは基本となる3つの法律を確認しましょう。
●景品表示法
一般的に「景表法」とも略されるこの法律は、大きく2つの規制があります。
- ①景品について取り決めた「景品規制」
- 懸賞応募などで景品類を提供したり、購入者にプレゼントを配ったりする場合の規制
- ②広告やパッケージに関する表示について取り決めた「表示規制」
- 広告について不当な表示を規制するもの
表示規制については、
- 優良誤認表示(実際のもの・他社のものよりも著しく良いもの(サービス)のように消費者に誤認させるおそれのある表示)
- 有利誤認表示(価格や内容料などの取引条件について、実際のものや他社のものよりもお得であるように見せて、消費者による合理的な選択を迫害するおそれのある表示)
の大きく2つに分類されます。
●不正競争防止法
不正競争防止法は、その名の通り、事業者間の不正競争を防ぐことを目的として定められた法律です。競合他社の商品やサービスを不正に利用したり、無断で使用したりすることを禁じています。広告に関するものについては大きく以下の3つの行為を禁止しています。
- 広く知られた商品やデザインと同一または類似の表示を使う行為
- 他人の商品などの表示として著名なものを自己の商品などの表示とする行為
- 品質や原産地などを誤認させるような表示をする行為
●著作権法
広告に写真や画像などを使用する際、それらの写真や画像にある著作権に留意しなくてはなりません。写真だけでなく、文章ももちろん著作物となります。著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)のことを指します。著作物を使用する場合には、著作者や著作権を持つ権利者と交渉をする必要があります。著作権フリーの写真や画像もありますが、商標利用やそうでないかによって使用方法が異なったり、無償で使える点数の制限があったりするので、注意が必要です。
これ以外にも、業種によって規制されている法律があります。宅地建物取引業法や薬機法、健康増進法、保険業法、特定商取引法などがその例です。薬機法や健康増進法は、医薬品や化粧品、健康食品などに、特定商取引法は通信販売などの広告にかかわってきます。
また、近年、強化されている規制の一例としてCookie規制が挙げられます。Cookieは、ブラウザでサイトを閲覧する際に作成され、データを一時的に保存する仕組みです。Cookieには、サイトの閲覧・操作履歴や、ログイン時に入力したID・パスワードなどが一時的に保存されます。
Cookieには主に2つの種類があります。
- 1st Party Cookie:ユーザーが閲覧したサイトの運営企業が発行するCookie
- 3rd Party Cookie:訪問したサイト以外のドメイン(第三者)が発行するCookie
最近、規制の対象となっているのは主に3rd Party Cookieです。これは複数のサイトを横断して閲覧した履歴を追跡し、リターゲティング広告(一度サイトに訪問したユーザーに対して広告を配信する追跡型広告のこと)などに利用されます。しかし、ユーザーがWebサイトを離れた後も行動を追跡できるという点から、プライバシーの観点で問題視されています。
■2023年10月1日から規制が強化された「ステマ広告」とは?
ステマ広告は、ステルスマーケティングの規制法(ステマ規制)に基づいて、景品表示法に明記され、法制定されました。これにより、SNSなどで商品を紹介する際に得られた報酬を明示することが求められています。この規制は、2019年にガイドラインとして導入され、今回法制定化されました。
●そもそも「ステルスマーケティング(ステマ)」って?
ステマとは、第三者的な立場を偽装して、特定の企業や製品について宣伝と気付かれないように商品を宣伝したり、商品に関するクチコミの発信・伝播を図る行為のことです。情報発信において企業の介在があるにもかかわらず、そのことを情報の受け手に隠したり偽ったりして行われる情報発信全般を指します。簡単に言うと、広告であるにもかかわらず、消費者に広告であると明記せずに隠して行う宣伝活動のことを意味します。
ステマには大きく2つの種類があります。
- ①企業自身が一般の消費者になりすまして宣伝する
- ②芸能人やインフルエンサーなどの第三者に依頼して宣伝をさせる
●なぜステマはダメなのか?ステマを規制しなければならない理由
ステマ規制の背景には、近年の広告市場の変化があります。近年、広告市場ではインターネット広告費が年々増加傾向にあります。2022年度には全体の43.5%を占め、世の中の広告の約半数がインターネット広告であるといえます。広告が増えれば、当然それを介した消費者の購買行動も盛んになりますが、インターネット上での消費者の購買行動には、口コミやSNSの情報が欠かせなくなっています。それを踏まえ、企業は広告やマーケティング活動において、口コミやSNSでの発信を活用する手法を積極的に取るようになりました。こういった傾向を悪用し、2000年代ごろからステマが横行し始めます。2012年には、グルメサイトでの口コミ操作やオークションサイトでの虚偽の口コミによる詐欺事件なども発生し、世の中に「ステマ」が知られるきっかけにもなりました。
ステルスマーケティング(ステマ)は、広告主の売上につながり、かつ広告効果も高いため、ついつい手を伸ばしてしまいがちですが、消費者の公正な判断を妨げないように規制する必要があるのです。
●ステマ規制とは?
消費者庁は、景品表示法が禁じる「不当表示」に2023年10月1日からステマを追加し、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」として取り締まりが行われています。これに違反すると行政処分の対象となり、措置命令が発せられます。また、企業が第三者に宣伝や口コミなどを依頼する場合には、事業者との関係を明示する義務が新たに設けられました。
●ステマ規制の運用基準について
【規制の対象】
主に行政処分の対象は広告主です。代理店やメディア、インフルエンサー、その他の投稿者は、基本的には処分の対象とはなりませんが、今後の規制強化の可能性があります。したがって、代理店やメディア、投稿者も規制への理解を深め、大切な広告主との連携を強化しながら広告を取り扱っていく必要があります。
【規制の基準】
ステマであるかどうかを判断する主な基準は、広告主の表示であるにもかかわらず、そう見えないかのように装われているかどうかです。(参考:「内閣府告示第19号」https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms216_230328_02.pdf)
そのため、広告の表示がなされている場合でも、その表示が不明瞭な場合には違反となります。例えば、ディスプレイ広告で「広告」の文字が入っている場合でも見えづらい状態であったり、動画広告で広告とわかる表記が瞬間的でわかりづらかったりする場合も、それにあたります。(参考:『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準 https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000247304)
おわりに
今回は、広告に関連するさまざまな法律や規制について解説しました。 基本となる法律に加えて、近年はcookie規制やステマ規制など、時代のニーズに合わせた規制も出てきています。昨今注目を集めている生成AIについても、AIが作った創作物に著作権が認められるのかどうかについて、活発に議論が行われています。みなさんも日々ニュースに耳を傾け、最新情報を取り入れながら広告を正しく扱っていきましょう。
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TEXT BY コミュニケーションデザイン本部 K
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